パートナーシップ構築宣言は、無料・手続き簡単でありながら、補助金の加点・賃上げ促進税制の上乗せ要件・日本政策金融公庫の融資要件など、多くの経営メリットに直結する取り組みです。
「補助金の加点になると聞いた」「賃上げ促進税制の要件で必要と言われた」「制度の内容をちゃんと理解したい」。
どんなきっかけでたどり着いた方にも、この記事でひととおり理解していただけるよう、中小企業診断士がわかりやすく解説します。
- よくある質問と注意点
- パートナーシップ構築宣言とは何か(わかりやすく解説)
- 宣言で得られる5つのメリット(補助金加点・賃上げ促進税制・融資など)
- 賃上げ促進税制との関係(なぜ要件になっているのか)
- 宣言の具体的な手順(6ステップ)
パートナーシップ構築宣言とは?
パートナーシップ構築宣言とは、企業規模を問わず「わが社は発注者として、取引先と適正な取引を行う」ということを、国が運営するポータルサイト上で宣言する制度です。
「受注者側の会社だから関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、仕入れ・外注・物品購入など、どの企業も「発注者」となる場面があります。
本制度は事業規模やサプライチェーン上の立場に関わらず、企業間取引を行うすべての企業が対象です。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | サプライチェーン全体での取引の適正化・パートナーシップ構築の推進 |
| 対象 | 業種・規模を問わず、企業間取引を行うすべての法人・個人事業主 |
| 費用 | 無料(ポータルサイトへの登録のみ) |
| 公表先 | パートナーシップ構築宣言ポータルサイト(検索・閲覧可能) |
| 主管 | 内閣府・経済産業省・中小企業庁 ほか関係省庁 |
ポータルサイトでは宣言済み企業を「業種別」「地域別」「企業名」で検索できます。中小企業だけでなく、大企業の多くも宣言を公表しています。
パートナーシップ構築宣言で得られる5つのメリット
① 賃上げ促進税制の上乗せ控除要件を満たせる
賃上げ促進税制(賃上げを行った企業が法人税等の控除を受けられる制度)には、控除率を引き上げるための上乗せ要件があり、そのひとつがパートナーシップ構築宣言の公表です。無料・簡単な手続きで要件を満たせるため、賃上げを予定している企業は特に早めに対応しておくことをおすすめします。詳細は下記の「賃上げ促進税制との関係」もご参照ください。
② 各種補助金の加点を取ることができる
ものづくり補助金をはじめ、多くの補助金でパートナーシップ構築宣言が加点項目となっています。
人気の高い補助金では採択率に大きく影響するため、宣言済みであることは申請上の大きなアドバンテージです。
主な対象補助金(例):ものづくり補助金、省エネ補助金 ほか多数
③ 日本政策金融公庫の融資(企業活力強化資金)の要件を満たせる
設備投資を行う際に利用できる日本政策金融公庫の「企業活力強化資金」において、パートナーシップ構築宣言の公表が要件のひとつとなっています。
設備投資と融資を組み合わせる際に活用できます。
④ 自社のブランド力・信頼性をアピールできる
宣言済み企業はポータルサイト上に公表され、ロゴマークも使用できます。
ホームページや名刺に掲載することで「適正な取引を行うホワイト企業」であることを取引先・求職者にアピールできます。
採用面でも効果が期待できます。
⑤ 各自治体の優遇措置(例:三重県の融資制度など)
各都道府県・市区町村でも、宣言公表企業を対象とした融資制度・補助制度を設けているケースがあります。
地元の支援機関や商工会議所に確認することをおすすめします。
賃上げ促進税制との関係
賃上げ促進税制とは
賃上げ促進税制とは、従業員の給与を前年度より一定割合以上引き上げた企業に対して、賃上げ額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から控除できる制度です。
中小企業にとっては、賃上げにかかるコストを国が実質的に補填してくれる、非常に効果的な制度です。
なぜパートナーシップ構築宣言が要件になっているのか
賃上げ促進税制には、基本控除率に加えて「上乗せ控除」を受けるためのいくつかの要件があります。その上乗せ要件のひとつが、パートナーシップ構築宣言の公表です。
国としては「自社の賃上げ」にとどまらず、取引先企業も含めたサプライチェーン全体での賃上げ・適正取引の実現を目指しており、パートナーシップ構築宣言がその意思表示として位置づけられています。
賃上げ促進税制の控除率・要件の詳細は年度ごとに改正される場合があります。最新の内容は国税庁・経済産業省の公式情報、または顧問税理士にご確認ください。
- 上乗せ控除の要件を満たすことができる
- 手続きが無料・比較的簡単なため、コストをかけずに要件を満たせる
- 一度宣言すれば継続的に要件を満たし続けることができる
賃上げ促進税制と補助金の組み合わせ活用については、こちらの解説記事もあわせてご覧ください。
パートナーシップ構築宣言の手順(6ステップ)
手続きは比較的シンプルです。公表まで数日〜1週間程度で完了します。
最新版をダウンロードしてください。古いひな形を使いまわさないよう注意が必要です。
ひな形には「定型部分(変更不可)」と「個別記載部分(自由に変更可)」があります。自社の取り組みに合わせて個別記載部分を記入してください。
公表は代表者名義となります。必ず代表が最終確認のうえ署名してください。
ポータルサイトへの提出はPDF形式で行います。
必要事項を入力し、PDFをアップロードして申請します。
公表後、ロゴマークのダウンロードが可能になります。
個別記載部分の記入のポイント
ひな形には「a. 企業間の連携」「d. グリーン化の取組」など複数の項目があります。すべて記入する必要はなく、自社で取り組む項目だけを残し、不要な項目は削除してください。
「内容がおかしいから差し戻し」という運用はほとんどないため、自社の言葉でわかりやすく書けば問題ありません。また、公表後の修正も可能です。

個別記載部分カスタマイズ例
a. 企業間の連携(オープンイノベーション、M&A等の事業承継支援 等)
協力会社と連携して新技術の開発に取り組む
d. グリーン化の取組(脱・低炭素化技術の共同開発、省エネ診断に係る助言・支援、生産工程等の脱・低炭素化、グリーン調達 等)
環境負荷の少ない製品を優先して調達を行う
古いひな形を修正・再利用すると受付されない場合があります。申請の際は必ずポータルサイトから最新版をダウンロードしてください。
パートナーシップ構築宣言のデメリット・注意点
パートナーシップ構築宣言はメリットの多い制度ですが、取り組む前に知っておくべき注意点もあります。正しく理解したうえで活用することで、制度の効果を最大限に引き出すことができます。
注意点① 形だけの宣言では効果がない
パートナーシップ構築宣言は、ポータルサイトに登録するだけで手続きが完了します。そのため、「補助金の加点が目的だから、とりあえず宣言だけしておこう」という形式的な取り組みになってしまうケースがあります。
しかし、宣言の本来の目的は取引の適正化と、サプライチェーン全体の付加価値向上です。宣言内容が社内で共有されず、実態を伴わない場合、取引先からの信頼を損なうリスクもあります。
宣言をする際は、「自社として何にコミットするか」を代表者だけでなく、実際に取引を担当する社員にも周知しておくことが大切です。
注意点② 取引先への一方的な押しつけにならないよう注意が必要
パートナーシップ構築宣言は、あくまで自社が発注者として取引先(協力会社・下請先など)と適正な取引を行う意思を示すものです。
ところが、「うちも宣言したから、あなたの会社も宣言してください」と取引先に要求するケースがあります。宣言はあくまで任意の自主的な制度であり、取引先に強制することは制度の趣旨に反するだけでなく、関係悪化につながる可能性があります。
宣言の普及は、あくまで自社の範囲で進めることが基本です。
注意点③ 宣言内容は定期的に見直す必要がある
一度宣言をポータルサイトに登録しても、そのまま放置してしまう企業は少なくありません。しかし、事業環境や取引先との関係は変化するものです。
定期的に宣言内容を見直し、実態に即した内容に更新することが、制度を形骸化させないポイントです。特に、宣言に含まれる具体的なコミットメント(価格交渉への対応方針、支払条件など)は、社内の実務と照らし合わせて確認するようにしましょう。
注意点④ 「補助金の加点」は確約ではない
パートナーシップ構築宣言は、各種補助金の加点項目として活用できる場合があります。しかし、加点はあくまで採択の可能性を高める要素のひとつであり、宣言をしたからといって補助金が必ず採択されるわけではありません。
また、補助金ごとに加点要件は異なり、制度改正によって変わることもあります。補助金を目的として宣言を行う場合は、最新の公募要領で加点要件を必ず確認することをお勧めします。
当事務所では、補助金はあくまで事業の「なりたい姿」を実現するためのサポートツールと位置づけています。パートナーシップ構築宣言も、制度の本来の趣旨を理解したうえで活用することが、長期的に見て最も効果的です。
パートナーシップ構築宣言に関するよくある質問(FAQ)
- Qパートナーシップ構築宣言に費用はかかりますか?
- A
無料です。ポータルサイトへの登録のみで、審査料・登録料は一切かかりません。
- Q個人事業主でも宣言できますか?
- A
はい、個人事業主でも宣言が可能です。業種・規模を問わず利用できます。
- Q宣言したら何か義務は発生しますか?
- A
宣言内容の実践に努める姿勢が求められますが、行政による強制的な検査・罰則などはありません。誠実に取引を行う意思表示の場として捉えてください。
- Q宣言後に内容を変更したり、取り消したりすることはできますか?
- A
はい、可能です。パートナーシップ構築宣言は、ポータルサイト上でいつでも内容の更新や取り消しを行うことができます。事業内容の変化や取引環境の変化に合わせて、宣言内容を定期的に見直すことが推奨されています。
- Q補助金の加点はいつから有効になりますか?
- A
公募要領によって異なりますが、一般的には「申請時点で公表済みであること」が要件です。補助金の申請前に余裕をもって宣言を公表しておくことをおすすめします。
- Qパートナーシップ構築宣言をしないと、補助金の審査で不利になりますか?
- A
補助金によって異なります。パートナーシップ構築宣言を「加点項目」としている補助金では、宣言をしていない場合は加点を受けられません。ただし、加点がないからといって必ず不採択になるわけではなく、事業計画の内容や他の加点要素で十分に補える場合もあります。まずは申請を検討している補助金の公募要領で、加点要件を確認することをお勧めします。
- Q中小企業でも宣言できますか?小さな会社には関係ない取り組みでしょうか?
- A
企業規模を問わず、どの会社でも宣言することができます。「自社も発注者になる場面がある企業」であれば、業種や規模に関係なく対象です。仕入れや外注を行っている中小企業・小規模事業者でも、宣言している事例は数多くあります。手続き自体も比較的簡単で、専用ポータルサイトから無料で登録できます。
まとめ:費用ゼロ・短期間でできる「経営の底上げ」施策
パートナーシップ構築宣言は、無料・短期間で実施できる一方で、賃上げ促進税制の控除率アップ、補助金の採択率向上、融資要件の充足、ブランド力強化など、多岐にわたる経営上のメリットをもたらす取り組みです。
特に、賃上げを検討している企業、補助金申請を予定している企業にとっては、早期に宣言を公表しておくことを強くおすすめします。
当事務所では、補助金申請の伴走支援と合わせてパートナーシップ構築宣言の登録もトータルでサポートしています。お気軽にご相談ください。
