補助金獲得の鍵!助成金や給付金との違いを知って成功への一歩を踏み出そう

はじめに

国や地方公共団体(または業界団体や公益財団法人などの団体)などは、国内の事業者や個人等を支援するために、さまざまな施策を用意しています。
「なんだか申請をすれば国(等)からお金を貰えるらしい」ということは理解していても、ちょっと調べてみると「補助金」であったり「助成金」であったり「給付金」であったりと名称がばらばらで、良くわからないから使わない(使えない)という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そのような方に向けて「補助金」「助成金」「給付金」の違いをご説明すると共に、その違いを認識した上で、補助金を獲得しビジネスに活用するには、どのようなことに留意すべきかどうかについてお伝えします。

補助金・助成金・給付金の簡単な違い

補助金・助成金・給付金の違いについて、まずは下記の図をご参考ください。
※施策の提供元や受給可能者はさまざまですが、ここでは主に事業者や事業者に雇用される従業員に向けたものを想定してご説明します。

種類補助金助成金給付金
概要特定の目標に沿った事業を行う事業主に対して交付するお金雇用の増加や人材育成、労働環境の改善等を行う事業者を支援するお金提示される条件を満たしていれば誰でも申請ができるお金
利用条件審査で採択される要件を満たす要件を満たす
返済不要不要不要
難易度普通~難
ものづくり補助金
事業再構築補助金
IT導入補助金
キャリアアップ助成金
両立支援等助成金
トライアル雇用助成金
保険給付
失業給付金
持続化給付金
支援診断士等社労士

わかりやすくまとめたつもりではありますが、やはりなじみがない方にはわかりづらいかと思います。ここから詳しくご説明いたしますので、ご安心ください。

多くの方が耳にされたことがあるのは、最近何かと話題に上がることも多かった「持続化給付金」や「事業再構築補助金」などではないでしょうか。
残念な方向での話題となることも多く、その結果「税金のばらまき」と言われてしまうこともあるこれらの施策ですが、本当の意味で必要とする人にとってはたいへん助けになる制度だと思います。
そのため、「知ったうえで利用しない」という選択をされるのであればいいのです。が、「知らなかったから利用しない(利用しなかった)」というのは非常にもったいないと考えます。
多くの公的施策の原資は税金です。正しく理解いただいたうえで、正しく活用いただき、ぜひとも事業の拡大や従業員の生活の質の向上等に繋げていただきたいというのが、この記事を作成した一番の目的です。

給付金とは

給付金は、基本的に何かしら”困った状況にある”事業者や個人を救済するために金銭等を支給するものです。
保険給付であればケガや病気をした際に支給。失業給付金は失業の状況にある方に支給。持続化給付金はコロナで大幅に売上が落ち込んだ事業者に対して支給、といったように、それぞれどのような前提があって支給が行われているかを考えていただくとわかりやすいかとおもいます。

困った状況にある方を対象とする以上、迅速に支払いが行われることが求められるため、手続きもあまり難しくありません。自身が支給要件を満たしていると証明ができれば間違いなく支給が行われるため、難易度「易」と考えます。

※その簡便さが仇となってしまったのが持続化給付金の不正受給問題ですね

助成金とは

助成金は、雇用の増加や人材育成、労働環境の改善など、主に人事労務に関する部分についての費用を助成するものです。そのため、多くは厚生労働省が実施しています。
給付金同様に、申請要件を満たしていれば基本的に間違いなく支給が行われます。しかし制度の内容が複雑であったり、申請に必要な資料をそろえることが、一般的な企業ではなかなか簡単ではなく、人事労務の専門家である社会保険労務士が申請を代行することが認められています。

申請要件を満たせば確実にもらえるものの、その手続きが給付金より難しいということで、難易度は「中~難」としています。

※助成金の申請代行は「社会保険労務士」の独占業務です。「中小企業診断士」にその権限はないため、「同じ国からお金をもらう制度だろう」とご相談をいただいてもご対応はできません

※余談ですが、東京都は補助金に属するような事業についてもまとめて「助成金事業」とご案内されています。人事労務に関することは社労士、設備投資等経営に関することは診断士などの経営コンサルタントにご相談、と判断いただくのがわかりやすいかと思います。

補助金とは

特定の目標に沿った事業を行う事業主に対して、機械設備の購入費や、建物の改修費、広告宣伝費など事業の実施に係るさまざまな費用の補助を行うものです。そのため、多くは経済産業省や、その中の中小企業庁などが実施しています。

給付金や助成金との大きな違いは、他の2つは要件を満たせば支給されることが確実であることに対して、補助金は「審査」という過程が存在するということです。

事業者にとっては貰えたらうれしいお金であるだけに、その事業内容や費用は妥当であるのか、実現性は高いのか(国の目標は達成されるのか)、さまざまな観点で審査が行われ、採択が発表されます。

  1. 申請要件を満たすこと
  2. 審査で高評価を受け採択されること

この2点を満たす必要があるため、難易度は「難」としています。

さらに補助金についてややこしいのは、採択を受けても、その時点ではまだ「補助金を受け取る権利を得た」というだけで、補助金がもらえることが確定しているわけではないということです。

補助金は一般的にどれも後払いです。事業計画を提出し、採択を受けた事業者は、採択後に事業計画書に記載した事業を実施し、必要な支払を全て終えた後で国に完了報告をします。そこで報告した内容が補助金のルールと照らし合わせて問題がないとお墨付きがついて、初めて補助金が支給されます。

そのため、せっかく採択を受けていても、事業実施の手順などを間違ってしまうと補助金が全額もらえないということもあります。申請に当たっては、制度についての深い理解が必要です。

このように難しい点がいくつもあるため、世の中には補助金申請を支援する専門家(中小企業診断士など)は数多くいます。そのため、人によっては「専門家に任せておけばいいや」とも思われるかもしれません。しかし、助成金とは異なり、補助金は事業者自身が申請を行うことが必須です。

(自社の今後を左右する事業計画を、他人が考え国に伝えるというのは、おかしな話ですからね)

しかしその難しさを超えてでも大きなメリットがあるのが補助金です。補助金の公式ホームページを良く確認いただくのはもちろん、上手に専門家の支援も活用しながら、ぜひとも利用いただきたい制度です。

補助金のメリットについて

おどしのようなことを連ねてしまって申し訳ないのですが、補助金のメリットについても是非お伝えさせてください。

補助金のメリットはさまざまですが、特にお伝えしたいのは4点です。

メリットその1:返済不要のお金を貰える

何よりも大きなメリットです。事業を行っていると、さまざまなタイミングで新しい取組が必要となります。しかし、その費用がネックとなって、なかなか現状を変えられない事業者様が多くいらっしゃいます。1/2や2/3など比率はさまざまですが、一部でもその負担が減ることで、新しいことにチャレンジできるだけではなく、その分のお金を他の何かに流用することができます。
お金は事業運営において、間違いなくあって困るものではないかと思います。

メリットその2:事業者の信頼性が向上する

補助金を申請し、採択を受けるということは、言い方を変えると自社が新たに取り組む事業について、国にお墨付きが貰えたともいえます。
多くの補助金では、補助金を実際に活用して事業に取り組んだ事業者様をホームページ等でも紹介しています。また、自社のホームページ等で自社が補助金で採択されたことや、補助金を使って導入した新しい設備について積極的に公表されている事業者様もいらっしゃいます。
従業員や取引先様、地域の住民などさまざまなステークホルダーに自社の取組をアピールする際においても、補助金の利用はたいへん有効と考えます。

メリットその3:繰り返し使える

多くの補助金は、1度利用したらもう二度と使えないというわけではなく、投資の目的が異なるのであれば、一定の期間を開けることで再度利用することができます。(事業再構築補助金など、一度だけの利用を前提としているものもあります)

そのため、補助金を活用している事業者様の多くは、また新しい取組を行いたいという場合に、再び補助金を申請されています。
1000万円の設備投資を2回(合計2000万円)行った事業者様がAとBといらっしゃったとして、Aは補助率1/2の補助金を2回とも活用し自腹金額は1000万円。Bはどちらも補助金を使わず、自腹金額は2000万円。この差は非常に大きいです。

メリットその4:自社の営業にも活用できる

補助金は、自社が新たな投資を行う際に使うというのはもちろん、自社の営業活動にも活用することができます。たとえば機械設備のメーカーやソフトウェアの提供を行うベンダー、商社などが、自社の製品を提案する際に、自社の利益を下げて「10%割引します」という値引きをしなくとも、うまく自社の製品とマッチする補助金があれば、「補助金が採択されれば、1/2の金額で導入いただけます」と案内できます。

印刷会社が特殊な機能をもった印刷機械を補助金を使って導入するのも良いですし、チラシ作成などを行いたいお客様に対して、補助金を提案いただくことも可能です。

前述の通り、補助金は複雑なルールが存在する為、どういった形式の書類(見積書や請求書など)が必要なのかを知っていることで、お客様に提案できるかできないかが大きく変わります。

補助金のデメリットについて

メリットを上げた一方、補助金についてはデメリットも存在します。

デメリットその1:国が決めた複雑なルールが存在する

多くの方が利用をためらう理由であるかと思いますが、国が作った制度であり、閲覧できる資料も難しいことが書かれており、とにかく複雑です。

国のルールで決めたとおりに進められない(進められなかった)事業については、全て補助金の支給対象外(または減額や、補助金の返金)となってしまいます。「そんなこと言われても今まで発注をする時に、こんなやりとりをしたことがない」という手順もあるかと思いますが、税金を使う以上は「いつもはこうしている」が通りません。発注先に対して、いつもは作らない書類をわざわざ作ってもらわねばならないこともあります。

そのような面倒を乗り越えてでもメリットを受けたいという意思が必要です。

デメリットその2:国の決めたスケジュールに合わせる必要がある

給付金や助成金は、それぞれ申請可能な期間が定められていることがあったとしても、基本的に要件を満たしたら随時申請をすることができます。(保険金の申請が年に1回、特定の月のみ可能といったルールはないですよね)

一方で補助金は、審査を行う必要がある以上、

  • 申請可能期間
  • 事業の実施期間

などが定められています。特定の期間中に応募した全事業者について、一斉に審査を行い、ある日まとめて結果発表を行います。また、●年●月●日に採択を受けた事業者は、いつからいつの間事業を実施するように、というのも指定されます。

そのため、自社の都合の良いタイミングで設備等の発注を行えるわけではありません。基本的には応募が開始してから1~2ヶ月後くらいに申請の締切が設定され、その後2~3カ月かけて審査が行われ、採択発表後、半年~1年程度の期間で取組(発注や支払など一覧の作業)を行う必要があります。

いくらお金がもらえるからと言っても、この国が決めたスケジュールに合わせて投資をするより、自腹で良いから一刻も早く取り組むべき投資もあります。

自社の取り組み内容が補助金のスケジュールと合わせることが可能かを、十分に確認する必要があります。

デメリットその3:全員が使えるわけではない

残念な話ですが、補助金は審査員に選ばれる(採択される)工程を踏む以上、誰もが必ず使えるものではありません。いくらとても良い計画を立てていても、更にそれを上回る事業計画書を作成した事業者がいるかもしれません。また、財務体制に不安があれば(例えば債務超過が継続しているなど)、それが理由で採択がされないことも考えられます。

「今回はたまたま選ばれなかっただけで、次回は採択されるかもしれない」と思っても、なかなか審査を通ることができない、そんな事業者様が困って専門家に相談される場合も多くございます。しかし、専門家も事業計画書を拝見して不足している情報や矛盾点などのアドバイスをすることはできても、100%の採択をお約束することはできません。

そのため、補助金が採択されることを前提で計画を組まれていると、その後の予定が大きく狂ってしまう可能性があります。補助金があると嬉しい。でも採択を受けられなくてもこのように工夫して予定通り実施したい。そのように活用いただくのが一番かと考えます。

デメリットその4:先に全額を用意する必要がある

前述の通り、補助金は基本的に後払いです。先に自社が自腹で全額支払いを行い、国はその支払いを確認した上で補助金の支給を行います。

場合によっては支払を行ってから、補助金が支給されるまで、手続きの都合上で数カ月以上間が空くことがあります。つなぎ融資を利用される事業者様もいらっしゃいますが、とにかくこの期間が厳しいという事業者様も多くいらっしゃいます。

デメリットその2にあげた「国のスケジュールに合わせる必要がある」とも重なりますが、申請してから補助金が振り込まれるまでの期間を耐えられるかどうかも、事前に十分検討いただければと思います。

さいごに

国からもらえて返済不要のお金である給付金、助成金、補助金ですが、それぞれ利用するためのルールを良く知り、利用いただく必要があります。

繰り返しとなりますが、知っていて利用しないのは良いと思いますが、知らずに利用しないのは非常にもったいない制度です。

商工会議所をはじめとした無料の相談機関なども活用しながら、時には専門家に相談も行い、ぜひとも上手に活用いただければと思います。

中小企業診断士+2児の母。 もともとはIT系を得意としていたはずが、補助金の申請支援のご希望が多いため、最近はすっかり補助金支援専門家になりつつありますが、どんなご相談でも歓迎です。1件1件について常により良い結果を目指し、全力で事業者様をご支援しております。